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情報科学科 狩野 裕 先生

【私の研究寄稿】「私の研究寄稿」では、基礎工学部の先生方が取り組まれている研究の楽しさや基礎工学部の魅力について語ります。第1回目は、情報科学科の狩野裕先生に「数理・データ・コンピュータ」をテーマに語って頂きました。

<前編> 夫婦別姓とポケモンGOが関係する!? – データを観るとはどういうことか –  

 数理科学は英語でいうと「mathematical science」。数学だけでもないしサイエンスだけでもない。それは、世の中の様々な現象を数学で理解しようとするアプローチであり、そのための数学を発展させようとする学問だ。統計学・データ科学は数理科学の重要なコンポーネント。最近はビッグデータとか最強の学問と言われている。基礎工学部はモノづくりの工学部と原理原則を追及する理学部の両者を融合させた、欲張りな学部だ。数理科学は数学という理学的な要素と数学を応用する工学とを融合した学問。基礎工学部で数理科学を研究できる理由が分かるだろう。実は、基礎工の数理科学は工学に留まらず、医学やファイナンスと数学の融合研究、心理学や社会学のデータ分析、Webのネットワーク分析など多くの分野に貢献している。だから、数理工学ではなくて数理科学。

 数理科学は現象を理解し予測し制御するための数学的道具だ。したがって、多くの応用がある。コンピュータは以前は大型の電卓だったが、今や、通信や高度な計算もお手の物。大量のデータも容易に蓄積しアクセスできる。人工知能という考えるコンピュータが出現して大いに進歩した。ロボットや自動車はコンピュータの塊だ。IoTやIoEは世の中のすべてのものをネットワークで繋ごうとしている。コンピュータを進歩させる情報科学は、これまた現代の偉大な道具なのだ。情報科学科では、21世紀の二大道具である数理と情報とを修得することができる。これらの道具を身に着け活用できれば怖いモノはないのである。学生が就職に困らない所以である。

 高校生の皆さんは、統計学・データ科学といってもピンと来ないだろう。統計と言うと平均や分散などの計算やグラフを描く作業だと思っているのではないか。もちろんそういったことも大事なのだが、より重要なのは、データを観る力であり、背後にある深遠な数学を理解できる能力である。

 表1のデータをご覧いただきたい。ある集団から220名を抽出してQ1:ポケモンGOにハマっているかどうか、Q2:夫婦別姓に賛成かどうか、をアンケート調査した結果である(*1)。実際はもっと色々と調査しているのだが、ここではこのQ1とQ2のみを取り上げる。

kano_label_Table1

 

 「ハマっている ∩ 賛成」(*2)に82人、「興味がない ∩ 反対」に82人,これらの数値には偏りがある(多いということ)。つまり、 ポケモンGOにハマっている人は夫婦別姓に賛成することが多く、ポケモンGOに興味がない人は夫婦別姓に反対することが多いというわけだ。こういった偏りがなければ、たとえば、表2のようになるはずである。すなわち、ポケモンGOにハマっていようがいまいが、夫婦別姓には7/11が賛成するということである。

kano_label_Table2

 表1のデータはポケモンGOの好悪と夫婦別姓の賛否に関係があることを示し、表2の方は関係がないことを示している。ポケモンGOの好悪と夫婦別姓の賛否には本来何の関係も無いと考えるのは自然だ。だとすれば、なぜ表1のようなデータが得られたのだろうか。高校生の皆様はどのように考えるだろうか・・・(中編につづく…)。

(*1)本来、選択肢は対称でないといけない。つまり、「興味がある、興味がない」「ハマっている、ハマっていない」などとする。また、ハマるの定義もしっかりと決めなければならない。たとえば、「9/22以降ポケモンの巣に5回以上出向いた」など。

(*2)記号 ∩ は「且つ」を意味する。「ハマっている ∩ 賛成」にはポケモンGOにハマっていて且つ夫婦別姓に賛成すると回答した人数が書かれている。

 

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