PROJECTS

未来を見据える、先端プロジェクト

人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ

システム科学科

人間の賢さをもつ
ロボットを目指して。

長井先生の研究プロジェクトは『ロボットは、もっと賢くなる。』がテーマ。一見、ロボットそのものを賢くしたいというメッセージのように見えますが、その裏には、ロボット研究を通して、人間の賢さについて知りたいという長井先生の想いが込められています。

Profile

基礎工学研究科 システム創成専攻

長井 隆行先生

1993年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業。1995年同大学院理工学研究科電気工学専攻前期博士課程修了。1997年同後期博士課程修了。博士(工学)。1998年電気通信大学助手、2003年カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員、2015年電気通信大学教授を経て、2018年より大阪大学大学院基礎工学研究科教授。電気通信大学人工知能先端研究センター特任教授、玉川大学脳科学研究所特別研究員、産総研人工知能研究センター客員研究員を兼務。

研究室URL:http://www.rlg.sys.es.osaka-u.ac.jp/

ロボットを通して「人間の賢さの秘密を知りたい」。

例えば、テレビの仕組みを知りたいなら、自分でテレビを作ってみることでその仕組みを知ることができます。長井先生がロボットを研究するうえで目指しているのは、「人間のように賢いロボットを作ることで、僕たち自身の働きというのをちゃんと理解する」こと。心理学や脳科学、医学、生物学などからのアプローチで、人間が個体としてどう生きているのかを物理的に知ることはできますが、その内側でどのような情報処理がなされているのか、それが人間の行動にどうつながっているのか、さらに人間が社会全体をどう構成しているのかはわかりません。その点、ロボットを作って研究すれば、内側、つまり仕組みを詳しく知ることができると考えているのです。

人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ

人間は、なぜコミュニケーションができるのか。

長井先生が人間の賢さについて研究しようと思ったきっかけは、「僕自身コミュニケーションが得意じゃなくて(笑)。そもそも人間同士はなぜコミュニケーションができるのか、よくよく考えると不思議だなと思った」こと。また、赤ちゃんは何も知らずに生まれてきますが、成長とともに話せるようになります。しかし、どうやって言葉を学習したのかは誰も覚えていません。そういった、発達心理学などから調べてみてもわかり得ない人間の不思議なメカニズムについて、もともと興味のあったロボットを使って研究をできれば、と考えたと言います。

カラダがあるから、主体的に学習できる。

長井先生の研究プロジェクトのひとつに、家庭用サービスロボットの研究があります。2020年までの5年間行われたプロジェクトで、最初はオペレーターがロボットを操作することで片付けを行うのですが、そのうち操作されなくても片付けができるようになるというものです。このプロジェクトによって、学習するメカニズムを搭載したロボットが、少ないデータだけで、ある種の常識のようなものを共有して学習できるということを示すことができました。「いまのAI研究では、膨大なデータを使って人間の賢さを作ろうとしていますが、僕たちのアプローチは『人間が少ないデータでできることなら、ロボットも少ないデータでできるはず』ということに基づいています。それには、『カラダがある』ということがすごく重要。ロボットというカラダを持つことによって、赤ちゃんが自分で見たり触れたりして学習するのと同じように学ぶことができる。ロボット自身が主体的に学び、経験をデータとして学習することが、人間の賢さにつながっていくと思っています」。

人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ

社会性という認識の壁

ロボットが人間と同じようにコミュニケーションするために不可欠なものは、自分と他者の違いをはじめとする「社会性」だと長井先生は考えます。ところが現状では、ロボットに1ヶ月ほど言葉を教え続けると、1歳半ぐらいの子どもが話す言葉は覚えられますが、それをひたすら続けても、2歳、3歳、4歳の子どものようになるかというと、そうはならないと言います。「それは時間の問題じゃなくて、学習するメカニズムの本質的な問題なんです。例えばロボットの名前が『ダイゴロウ』だとして、『お前の名前はダイゴロウだよ』と一生懸命教えるとします。すると、『ダイゴロウ』という文字面は覚えられるんですが、それが自分のことだとか自分の名前だとかいう概念は、いまはまだ学習できないんです」。

人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ

最終目標は、「パートナー」になれるロボット

感情をもつことも、「社会性」において大きな要素のひとつです。人間の感情は、脳がカラダからの信号を処理する過程で生まれているということがいまの研究でわかっています。例えば、「うれしい」という感情は、自分のカラダの状態を脳が信号をもらい、その状態を「うれしいんだね」と言われることで、「うれしい」という概念が作られます。つまり、感情は学習できるということ。であれば、ロボットも感情をもつことができると、長井先生は考えています。「現在、『ソフトロボティクス』といって、やわらかいカラダを持ったロボットの研究が進んできています。人工筋肉や、場合によっては内臓を作ることもできます。そうして作った内臓から人間と同じように情報をコンピュータが吸い上げて、情報を処理する。その過程でロボットなりの感情が生まれてきますし、人間に近くなってくると思うのです」。現状のAIは、相手の表情を画像処理することで感情をパターンとして認識しています。しかし、人間は相手の表情も観察しますが、むしろその表情を自分がするときはどのようなときかを投影して、相手の感情を理解しています。人間のように感情を学習したロボットならば、相手を理解することもできるようになると語る長井先生。「これからも研究を続けていけば、パートナーとして信頼でき、心から友だちといえるような存在は作り出せるのではないかと思っているし、それが最終的なゴールです」。

人間の賢さをもつロボットを目指して。イメージ

受験生へのメッセージ

長井 隆行 先生

基礎工学部は、理系や文系の垣根すら超えた、いろんな分野の融合を目指しているところです。僕自身の研究が人間やロボット、いろんな技術の積み重ねなので、幅広く興味をもっていろんなことを研究する必要があります。創造性豊かな研究をするために、「人と違う」という価値観は重要ですし、その違いが新しいことを生み出します。基礎工学部を志望する受験生の皆さんには、自分の未来を考えるときに興味の対象を絞り過ぎず、ぜひいろんなことにチャレンジしてほしいと思っています。

Copyright © 2021 Osaka University, School / Graduate School of Engineering Science. All rights reserved.
↑
×